居酒屋を開業する、あるいは既存店をリニューアルするとき、最初に手が止まるのが内装デザインです。

おしゃれにしたい気持ちはあっても、どのテイストを選べばいいのか、どこまで費用をかけるべきかの判断材料が手元にないという方は少なくありません。

結論として、居酒屋のデザインはコンセプトを1行に言語化したうえで7つのテイストから型を選び、照明・素材・レイアウトの3点で作り込むのが最短ルートです。

費用は物件の状態によって坪単価20〜80万円が目安になります。

この記事では、コンセプト設計の手順からテイスト別の特徴、おしゃれに見せる設計要素、小さな店舗を広く見せるレイアウト、費用相場、許認可と業者選びまでを順に整理していきます。

目次

居酒屋のデザインはコンセプト設計から決まる

居酒屋のデザインはコンセプト設計から決まる

居酒屋のデザインは、素材や色を選ぶ前の段階でほぼ決まります。

誰に何を売る店なのかを固めないまま設計に入ると、打ち合わせの途中で判断基準を失ってしまうためです。

居酒屋デザインが集客を左右する理由

居酒屋の内装デザインは、来店するかどうかを決める最初の判断材料になります。

初めて訪れる客が店の前で得られる情報は、外観の雰囲気と窓越しに見える店内だけだからです。

同じ価格帯の焼き鳥店が並ぶ通りであれば、木の質感と暖色の照明でまとめた店のほうが入りやすく感じられるでしょう。

内装は看板や広告に近い集客投資であり、見た目の好みではなくコンセプトとの一致で判断すべき領域といえます。

ターゲットと客単価から逆算する手順

デザインの方向性は、ターゲットと客単価から逆算すると迷いにくくなります。

客単価が上がるほど1席あたりに必要な面積や造作の単価も上がり、先に数字を置かないと席数と予算が合わなくなるためです。

具体的には次の順番で決めていきます。

  1. 主なターゲットの年代と来店シーンを決める
  2. 客単価と1日の想定回転数を置く
  3. 必要な席数と客席面積を算出する
  4. 席数に見合う厨房規模と造作予算を配分する

この4ステップを先に固めておくと、設計者との打ち合わせが「好み」ではなく「条件」の議論になります。

コンセプトを1行に言語化するコツ

コンセプトは「誰が・いつ・何をする店か」を1行にまとめると、業者への共有精度が上がります。

「おしゃれな居酒屋にしたい」という伝え方では設計者が判断できず、打ち合わせごとに方向性がぶれてしまうからです。

たとえば「仕事帰りの30代が1人で30分だけ寄れる立ち飲み」と書ければ、カウンターの高さ、通路幅、照明の明るさまで自然に絞り込めます。

1行に収まらないときは、ターゲットの解像度が足りていないサインと考えましょう。

おしゃれな居酒屋内装をつくる7つのテイスト

おしゃれな居酒屋内装をつくる7つのテイスト

居酒屋の内装デザインは無数にあるように見えて、実際は7つのテイストに整理できます。

まずは自店の客単価とターゲットに近い型を1つ選び、そこから細部を詰めていくのが効率的な進め方です。

おしゃれな居酒屋内装をつくる7つのテイスト
  1. 和風
  2. 和モダン
  3. レトロ・昭和
  4. ネオ居酒屋
  5. 大衆酒場・立ち飲み
  6. モダン・インダストリアル
  7. 洋風パブ・ビストロ
テイスト主なターゲット代表的な素材・要素相性のよい客単価
和風40〜60代・接待利用障子、畳、和紙照明、木格子5,000円以上
和モダン30〜50代・デート黒系の塗り壁、間接照明、無垢材4,000〜7,000円
レトロ・昭和20〜40代・常連客木製看板、赤提灯、タイル、ポスター2,500〜4,000円
ネオ居酒屋20〜30代・女性グループネオンサイン、原色タイル、鏡3,000〜4,500円
大衆酒場・立ち飲み全年代・1人客ステンレスカウンター、簡素な什器2,000〜3,500円
モダン・インダストリアル20〜40代・少人数躯体表し、黒鉄、配管露出3,500〜6,000円
洋風パブ・ビストロ30〜40代女性レンガ、濃色の木材、真鍮3,500〜6,000円

和風は正統な素材で落ち着きを出す

客単価5,000円以上の和食寄りの店なら、正統な和風が有力です。

障子や畳、木格子、和紙照明といった素材を全面に使うことで、料理の格を空間側から支えられます。

壁や通路に曲線を取り入れると硬さが和らぎ、接待利用にも耐える落ち着きが出るでしょう。

ただし建具や左官の造作費はかさむため、予算配分を事前に確認しておく必要があります。

和モダンは上質さと入りやすさを両立できる

幅広い年代に対応させたいなら、和モダンが扱いやすいテイストです。

和の素材感を残しながら直線的な構成と間接照明を組み合わせるため、和食の重厚さと現代的な軽さを同時に出せます。

黒やダークグレーの壁に無垢材のカウンター、和紙シェードのペンダントを合わせる構成が定番でしょう。

仕上げの詳細は和モダンな飲食店内装の作り方で解説しています。

レトロ・昭和は低コストで個性を出せる

予算を抑えつつ個性を出したい場合は、レトロや昭和テイストが向いています。

既存の壁や配管をあえて残し、看板・ポスター・タイルといった小物で世界観を組み立てられるため、造作の総量を減らせるからです。

ただし古さと汚れの境界は客に伝わりやすいので、清掃性の高い床材と照度の設計だけは妥協しないほうが無難といえます。

ネオ居酒屋はSNS映えで若年層を集める

20〜30代の女性グループを狙うなら、ネオ居酒屋が有力な選択肢になります。

ネオンサインや原色タイル、鏡を使った演出は写真映えしやすく、来店客自身の投稿が次の集客につながるからです。

撮影されやすい壁面を1か所に決め、そこへ照明と装飾を集中させると、限られた予算でも強い印象を作れます。

大衆酒場・立ち飲みは回転率を高めやすい

客単価を抑えて客数で稼ぐ設計なら、大衆酒場や立ち飲みが適しています。

ステンレスカウンターと簡素な什器で構成できるため造作費が軽く、立ち飲みであれば1坪あたりの収容人数も増やせます。

バー寄りの構成を検討する場合はバーの内装費用もあわせて見ておくと、予算の比較がしやすいでしょう。

モダン・インダストリアルは無骨さで魅せる

無骨さで差をつけたいなら、モダン・インダストリアルが選択肢になります。

躯体表しの天井や黒鉄のフレーム、露出配管をそのまま見せる構成のため、仕上げ材を減らしながら密度のある空間を作れるからです。

かっこいい居酒屋内装を目指す層には届きやすい一方、音が反響しやすい点は弱点といえます。

吸音材や布素材を部分的に足して調整します。

洋風パブ・ビストロは女性客が入りやすい

女性客やグループ利用を増やしたいなら、洋風パブやビストロ寄りの構成が有効です。

レンガや濃色の木材、真鍮の金物でまとめると照度をやや高めに設定でき、初来店でも入りづらさを感じにくくなります。

提灯や暖簾といった和の記号を使わない分、居酒屋であることはメニュー表記と看板で明示する設計が必要です。

居酒屋をおしゃれに見せる4つの設計要素

居酒屋をおしゃれに見せる4つの設計要素

デザイン・テイストが決まったら、次は空間の印象をつくる具体的な要素を設計します。

おしゃれに見える居酒屋内装は、感性ではなく4つの要素の一貫性で成り立っています。

居酒屋をおしゃれに見せる4つの設計要素
  1. 照明は色温度と配置で雰囲気が変わる
  2. 素材は木・土壁・鉄で世界観を決める
  3. 配色は3色までに絞ると失敗しにくい
  4. 外観と看板は入店率を左右する

照明は色温度と配置で雰囲気が変わる

居酒屋の印象をもっとも大きく変える要素は照明です。

同じ内装でも、色温度によって客の滞在意欲は大きく変わります。

全体照明の照度を落とし、テーブル面と手元、料理の見え方に光を集めるのが基本の考え方でしょう。

色温度の目安光の印象向いている場所・業態
2700K前後(電球色)暖かく落ち着く和モダン、レトロ、洋風パブの客席
3000〜3500K(温白色)自然でやや明るい大衆酒場、立ち飲みの客席
4000K以上(白色)明るく作業的厨房、バックヤード

天井が低い店舗では、ペンダントライトを座った客の視線より下げると、圧迫感を出さずに落ち着いた空間を作れます。

素材は木・土壁・鉄で世界観を決める

素材は主役を1つに絞ると世界観がまとまります。

木・土壁・鉄・タイルをすべて同じ比重で使うと、テイストが読み取れない空間になってしまうためです。

和系なら木と左官仕上げ、インダストリアル系なら鉄と躯体表しを軸にすると判断が早くなります。

躯体を活かす手法についてはコンクリート打ちっぱなしの内装で詳しく整理しています。

配色は3色までに絞ると失敗しにくい

配色は3色までに絞るのが安全です。

ベースカラー、メインカラー、アクセントカラーの役割を分けて配分すれば、色数が増えても散らかった印象になりません。

目安として床や壁のベースを7割、造作や家具のメインを2割、看板や小物のアクセントを1割程度にそろえます。

迷ったときはアクセントを削るほうが、追加するより失敗しにくい判断です。

外観と看板は入店率を左右する

内装が仕上がっても、外観が閉じていれば新規客は入りません。

通行人が判断できる情報は、看板の内容と入口から見える店内の様子だけだからです。

価格帯とメニューが読み取れる看板を出し、入口の建具は一部を透明にして人の気配が見える状態にしておきましょう。

赤提灯や暖簾も、業態を一瞬で伝える装置として今なお有効に機能します。

小さな居酒屋を広く見せるレイアウト設計

小さな居酒屋を広く見せるレイアウト設計

10坪前後の小さな居酒屋では、レイアウトが売上と居心地の両方を左右します。

限られた面積でも、面積配分と視線の設計を押さえれば窮屈な印象は避けられます。

客席と厨房の面積配分の目安を押さえる

レイアウトは、客席と厨房の面積配分から決めます。

居酒屋では延床面積の6〜7割を客席、残りを厨房とバックヤードに充てるのが一般的な配分です。

席数の目安は客席1坪あたり1.5〜2席のため、10坪の店舗なら客席7坪前後で10〜14席が現実的なラインになるでしょう。

狭小物件での考え方は3坪の飲食店レイアウトも参考になります。

カウンターは形で席数と会話量が変わる

カウンターは形状によって性格が変わります。

壁付けのI字は通路を広く取れる一方で客同士の視線が交わらず、L字やコの字は同じ面積でも席数を稼ぎつつ会話が生まれやすくなります。

1人客の常連化を狙うならコの字、グループ客中心ならI字とテーブル席の併用が扱いやすい構成でしょう。

視線の抜けと鏡で狭さを感じさせない

狭さの印象は、実面積よりも視線の抜け方で決まります。

奥まで視線が届く方向が1つあるだけで、体感的な広さは変わってくるものです。

具体的には次のような手法が有効です。

  • 壁面上部への横長の鏡の設置
  • 躯体表しによる天井高の確保
  • 腰高までに抑えた間仕切り
  • 床材と壁材の色調をそろえた連続感

動線を分けて回転率と満足度を上げる

客とスタッフの動線は交差させないのが原則です。

配膳と客の出入りが同じ経路になると、提供が遅れるうえに客のストレスにもつながります。

厨房の出口からもっとも遠い席までの経路を1本描き、途中で客席の背後を通らないかを確認しましょう。

通路幅は主動線で900mm前後、席間の副動線で600mm前後を確保できると運用が安定します。

居酒屋の内装デザインにかかる費用相場

居酒屋の内装デザインにかかる費用相場

デザインの方向性が固まったら、費用の相場観を持っておく必要があります。

坪単価は物件の状態で大きく変わるため、まず自分の物件がどちらに当たるかを確認してください。

坪単価は物件の状態で2倍近く変わる

居酒屋の内装費用は、物件の状態によって大きく変わります。

居抜き物件なら坪20〜50万円、スケルトン物件なら坪40〜80万円が目安です。

スケルトンは電気・ガス・給排水・空調をゼロから引く必要があるためで、15坪の店舗であれば設計費と厨房設備を含めて600万〜1,200万円前後になるケースもあります。

両者の違いは居抜きとスケルトンの違い、業種横断の相場感は店舗の内装工事費用の相場で確認できます。

費用の内訳と別予算になりやすい項目

見積もりを比較する際は、坪単価に含まれない項目に注意が必要です。

厨房機器や特注造作、看板、家具は坪単価とは別枠で計上されることが多く、総額でそろえないと判断を誤ります。

項目費用の位置づけ確認ポイント
内装仕上げ工事坪単価に含む床・壁・天井の仕様グレード
設備工事坪単価に含む電気容量、給排水、空調の能力
厨房機器別予算が多い新品か中古か、リースの可否
特注造作別予算が多いカウンター、個室、掘りごたつ
看板・家具・什器別予算が多い数量と設置費が含まれているか

相見積もりは総額と含有範囲をそろえてから比較しましょう。

デザインを保ちながら費用を抑える方法

デザイン性を落とさずに費用を抑えるなら、予算の配分を見直すのが有効です。

和モダンやレトロのように造作の多いテイストは、標準仕様と比べて坪単価が10〜20万円ほど上乗せされる傾向にあります。

そこで客の視界に入る客席とファサードへ予算を集中させ、バックヤードや厨房の内装は標準仕上げに寄せる進め方が現実的でしょう。

既存店の改装であれば飲食店の改装費用の内訳も判断材料になります。

デザインの前に確認する法規と業者選び

デザインの前に確認する法規と業者選び

内装デザインは、法規と業者選びを外すとやり直しが発生します。

図面を描き始める前に押さえておくべき手続きと、業者を比較するときの基準を整理します。

保健所と消防の基準は設計前に確認する

許認可の基準は、図面を描く前に確認しておく必要があります。

飲食店営業許可には手洗い設備や厨房と客席の区画などの施設基準があり、後から知ると図面のやり直しが発生してしまいます。

内装工事の契約前に、管轄の保健所と消防署へ図面を持って相談してください。

収容人数や規模によっては、防火対象物工事等計画の届出も必要になるでしょう。

深夜営業には警察署への届出が必要

深夜0時以降に主として酒類を提供する場合、飲食店営業許可とは別の届出が求められます。

届出には営業所の平面図や求積図が必要になるため、設計段階から書類作成を見込んでおくと進行が滞りません。

届出は営業開始日の10日前までに、所轄の警察署を経由して公安委員会へ提出します。
引用元:警視庁 深夜における酒類提供飲食店営業の届出

排気と換気は設計初期に決めておく

焼き物や揚げ物を扱う居酒屋では、排気と換気の計画を最初に固めます。

ダクトの経路とグリスフィルターの位置は厨房のレイアウトを左右し、後から変更すると天井や造作のやり直しにつながるからです。

ビルイン物件の場合は、ダクトを外部へ通せるルートがあるかを契約前に確認しておきましょう。

近隣への臭気や騒音のトラブルも、この段階で大半を予防できます。

居酒屋の実績で内装業者を見極める

業者は「飲食店の実績」ではなく「居酒屋の実績」で見極めます。

居酒屋は厨房設備の点数が多く、個室や掘りごたつなどの造作、深夜営業に伴う防音まで論点が広いためです。

比較の際は次の3点を確認しておきましょう。

  1. 同規模・同業態の施工事例があるか
  2. 設計と施工のどこまでを自社で担うか
  3. 見積もりの内訳が項目ごとに開示されるか

複数社から提案を受け、同じ条件で総額と含有範囲を並べて比較すると判断しやすくなります。

居酒屋のデザインに関するよくある質問

居酒屋のデザインに関するよくある質問

居酒屋のデザインを検討する段階でよく寄せられる質問をまとめます。

費用や工期の目安を先に把握しておくと、業者との打ち合わせがスムーズに進みます。

Q

居酒屋の内装工事費用はいくらかかりますか?

A

居抜き物件で坪20〜50万円、スケルトン物件で坪40〜80万円が目安です。15坪のスケルトン物件なら、設計費と厨房設備を含めて600万〜1,200万円前後になるケースもあります。個室の数や厨房設備のグレードで変動します。

Q

飲食店のゾーニングとは何ですか?

A

店舗の面積を客席・厨房・バックヤード・トイレなどの用途ごとに区分し、配置を決める作業です。居酒屋では延床面積の6〜7割を客席に充てる配分が一般的で、この段階で席数と厨房規模の上限が決まります。

Q

居抜き物件でもおしゃれな居酒屋内装にできますか?

A

可能です。既存の躯体や設備を残しつつ、照明・カウンター・壁面など客の視界に入る部分だけを更新する方法が有効です。レトロやインダストリアル系のテイストは既存部分を活かしやすく、費用を抑えながら世界観を作れます。

Q

内装工事の期間はどのくらい見ておくべきですか?

A

工事期間はスケルトン物件で2〜3か月、居抜き物件で2週間〜1か月半が一般的です。設計に1〜2か月かかるため、物件契約から開業までは3〜5か月を見込んでおくと安心でしょう。

Q

デザインは設計事務所と施工会社のどちらに依頼すべきですか?

A

デザインの独自性を優先するなら設計事務所、コストと工程管理を優先するなら設計施工を一括で担う会社が向いています。小規模店舗では窓口が一本化される設計施工型のほうが、調整の手間と費用を抑えやすい傾向です。

居酒屋デザインで押さえるべき要点のまとめ

ここまで、居酒屋デザインの決め方をコンセプト設計から業者選びまで見てきました。

最後に、進める順番として押さえておきたい要点を整理します。

この記事のまとめ
  • コンセプトを1行に言語化してから設計に入る
  • 7つのデザイン・テイストから客単価に合う型を選ぶ
  • 照明・素材・配色・外観の4要素を一貫させる
  • 客席は延床面積の6〜7割を目安に配分する
  • 坪単価は居抜き20〜50万円・スケルトン40〜80万円を想定する
  • 保健所・消防・警察の手続きを設計前に確認する

居酒屋の内装デザインで失敗が起きるのは、テイストや素材の選択そのものではありません。

コンセプトと数字を固める前に、見た目の話から始めてしまうケースがほとんどです。

ターゲットと客単価、席数、予算配分の4点を先に決めておけば、設計者や施工会社との打ち合わせは具体的な条件のすり合わせに変わります。

そのうえで、複数社から同じ条件で見積もりを取り、総額と含有範囲をそろえて比較するところまでを一連の流れとして進めましょう。

デザインと予算、法規の3点が同じ土台に乗っていれば、開業後に修正が必要になる場面は大きく減らせます。